空気清浄機とマイナスイオン

以前は、オゾンは海や山にはふんだんにあり健康に良いもの、殺菌作用もあり体に良いものとされていたので、大手家電メーカーもオゾンを発生する機器を宣伝していたことがありました。しかし、科学的なオゾンの効能や副作用が一般的に知られるようになると、オゾンは殺菌作用がある半面、強いオゾンは人間の気管などに悪影響を与えたりすることや、活性酸素との関係が取り上げられるようになると、オゾンを発生する機能がある家電製品についてもオゾンと言う単語をあまり使わないようになりました。そして取って代わるように登場したのが空気清浄機です。

空気清浄機の競争で登場したマイナスイオン

空気清浄機の主な目的は空気中のホコリなどを取り去ってきれいにすることです。
空気清浄機の中心となる部品は、汚れた空気を吸い込んできれいな空気を送り出すためのモーターで動くファンと、汚れた空気に含まれるホコリや花粉やダニの死骸などを濾過するためのフィルターです。
空気中の不純物をフィルターで濾過して取り除くことにより、空気清浄機からは綺麗な空気が出て来るという、誰にでも分かり易い仕組みです。
各社から空気清浄機が登場してくると販売競争が始まり、フィルターの細かさで空気のキレイさを競う競争が始まり、やがて価格競争になだれ込みます。
価格競争が下げ止まりしてしばらくすると宣伝作戦上、他社の製品や他の機種と差別化をするために「何か」を付け加える必要性が生まれます。
そして登場したのがマイナスイオンです。

科学者は誰も知らないマイナスイオン

結論から先に言うと、マイナスイオンというのは家電メーカーとマスコミが作り出した言葉、つまり「造語」です。
マイナスイオンは「ジーパン」や「ベビーカー」と同じ日本独自の造語なので、外国の科学者に言っても別の意味にとられてしまいます。
中学の科学では似たような単語で「陰イオン」と「陽イオン」という言葉がでてきますが、マイナスイオンは陰イオンではなく、もちろん陽イオンでもありません。
ではマイナスイオンは何かと言うと、各家電メーカーがそれぞれ独自に定義を決めています。
ほとんどの大手家電メーカーのサイトにはマイナスイオンについての説明が書かれていますが、その内容は「空気中の〇〇〇を※※※したものをマイナスイオンと呼ぶ」とか、「大気中の△△△が◇◇◇になった状態をマイナスイオンと言う」などと書かれています。
要するに、マイナスイオンは「□□□の分子にマイナス電子が付いたもの」とか、「◎◎◎原子から電子が離れたもの」と言う科学的な定義ではないのです。

マイナスイオンの正体

一般的にマイナスイオンと呼ばれているものはプラスもしくはマイナスの電荷を帯びた分子であったり、水の微細粒子であったり、紫外線や高電圧で発生したオゾン分子であったりします。
しかし科学や電子に詳しくない一般の人に説明する場合、水の微細粒子ではただの水との違いがはっきりしないし、電荷を帯びた分子では感電するのではないかと恐れられたり、オゾンという単語では体の影響を心配されたりします。
このため、これらをひっくるめて「マイナスイオン」と言う単語が使われるようになったのだと思います。

マイナスイオンのご利益

最近はあまり言われなくなりましたが、一昔前は滝壺の周りにはマイナスイオンがいっぱいあると言われ、観光地のパンフレットなどにも堂々と書かれていました。
最近ではマイナスイオンについての解説は修正されているものが多くなりましたが、古いホームページを更新していない地方自治体のサイトには、滝壺からはマイナスイオンが発生し健康に良いなどと書かれているものも残っています。
では、マイナスイオンと言うものは全く存在しないもので人間に対して何も影響がないのかと言うと微妙です。
例えば、滝壺の周りには水の微細粒子があり、暑い時期に肌に付着した水の微細粒子が蒸発することで体感温度が下がり、爽快感を感じることができます。
また呼吸で水の微細粒子を吸い込むことで、喉の渇きや気道の渇きを緩和することもでき、体の内部から清涼感を味わうこともできます。
さらに、人間には暗示により気分が変わる人も多いので、「縁結び神社のお守りを持っていたら彼氏ができてラッキーです。」という人がいるように、「マイナスイオンを発生させる空気清浄機を買ったらウキウキして幸せ」という人がいても不思議ではありません。
要するに、買った人が「マイナスイオン」という言葉に満足すれば良いのです。